mardi, novembre 22, 2005

プロフェッサー広瀬との一夜[Hitoshi Oba]

 先週18日(金曜日)夜、久しぶりに物理学者・広瀬立成先生にお目にかかって、お話をうかがった。東京都立大学教授を定年まで務められ、現在は早稲田大学理工学部の大学院で指導にあたっておられる。私の在職中は小学館の現代用語事典『DATA PAL(データパル)』などで大変お世話になった先生である。
 先生の専攻は高エネルギー物理学実験。いわゆる「実験屋」である。実験は体力が勝負という面も大きいらしく、実験屋にはスポーツマンが多いという。先生もその例にもれず、大学時代から空手部のハードな鍛錬に明け暮れ(おでんかなにかの屋台でヤクザを退治したなどという武勇伝もあるらしい)、都立大学では空手部顧問も務められた。
 空手だけではなく、沢登り、水泳、スキューバダイビングなど、その範囲はどんどん広がっていく。しかも、どの種目についても打ち込み方が半端ではない。「どれもきつくてギリギリのところまで自分の体を追い込まないと気がすまないんです。少しマゾの気があるのかもしれません」とおっしゃる。ちなみに今いちばん熱中しておられるのは乗馬とのこと。
 まさに文武両道、「文武無道」の当方は、いつも恐縮しながらお話をうかがうことになるのである。
 まさに「快男児」。ちょっと例えは悪いかもしれないけれど、佐々木倫子『動物のお医者さん』の漆原教授を彷彿とさせる先生である(漆原教授は、もちろん同作品で私がもっとも好きなキャラである)。
 先生は近年、仏教、とくに空海に大きな関心を寄せられ、来年初めには『空海とアインシュタイン』という本をPHP研究所から上梓される。宇宙、時間、空間のあり方などについて空海とアインシュタインが縦横無尽に語り合うという、興味深い内容である。
 また、先生は今年の夏、チベットを乗馬で回ってこられ、チベットについても空海-アインシュタイン的な視座から是非書いてみたいとおっしゃる。前置きが長くなったが、先週もそのお話をうかがいに行ったのである。チベットの歴史、現状から、物理学的に見た環境の問題まで、まさに談論風発。お酒をいただきながらの話だったのだが、あまり強くない私は、くらくらしながらお話に付いていくのが精一杯。「概要などをまとめていただけませんか」とお願いしたところ、翌日早速大量の資料とともに送ってくださった。これをなんとか自分の手で本にしたい、というのが現在の私の「野望」である。取り敢えずその資料に目を通している最中で、そういうわけでこの間書いた徳川夢声の『銭と共に老ひぬ』についてはちょっと後回しになってしまいました。いずれまたの機会に。

大場仁史