samedi, octobre 28, 2006

祖父と音楽[Minoru Ota]

 おじいさん子は三文安い。
 おふくろはよくそう言って、小さな僕のわがままやだらしのなさをたしなめた。
 年寄りに甘やかされて育った子どもは、そうでない子どもにくらべて劣るという意味だけど、この年齢になると、おふくろの言ったことがほんとうによくわかる。僕を大事にしてくれた祖父には感謝してもしたりないが、やっぱり僕は三文安いなと思う。小学6年の娘のほうがはるかに立派だと感じることがしょっちゅうだ。
 それでも、繰り返しになるが、祖父には感謝してもしたりない。
 別に、押し入れに隠してあった日本刀や鉄砲で遊ぶことができたからでも、いかさま花札の彼が名人であったからでもない。僕の音楽の最初の記憶が祖父のかけていた72回転のレコードたちだからだ。
 祖父は大きな電蓄の前に片手で頭を支えて横になり、もう一方の手で拍子を取りながら、音楽を聴くのだ。僕はそんな祖父にまとわりついて、甘える。僕が幼稚園のころの記憶である。
 そうやって祖父が聴いていた曲の中でいまでも覚えているのが、ワルツの2拍目と3拍目を犬の声が「ワンワン」と歌う英語の歌だ。おそらく、生まれて初めて好きになった曲と言ってもよい。ただ、あまりに幼いときに聴いた曲であるから、名前も何もわからない。覚えているのは、「ワンワン」と鳴く犬の声と、それにからんで軽やかに歌われる女性のコーラスだ。
 先日、突如としてこの歌のことを思い出した。きっかけは忘れた。
 iTunesMusicStoreで、探してみた。きっと、dogという言葉が曲名に入っているに違いないと、dogがつく曲を片っ端から探しては試聴した。当たりだった。僕は発見した!! あの、何十年も前に、上機嫌で寝ころんでいる祖父と一緒に聴いた曲を僕は発見したのだ!!
 その曲の名は「(How Much Is) That Doggie In the Window」。歌うはPatti Page。当時、日本でも大人気の歌手だったから、きっとこのレコードだったのだろう。確かに曲自体はこれに間違いはない。でも、僕の記憶では女性の3部コーラスだったようなのだけど、それは記憶違いで、やはりパティ・ペイジのこの盤なのだろうか。
 いずれにしても、この曲を再生した途端に、当時の思い出が、つまり僕が5歳、6歳だったころの思い出が、聴覚を中心として沸々とわき上がっていくのだった。
 僕の音楽の基盤はここにある。唱歌でもなく、歌謡曲でもなく、この「(How Much Is) That Doggie In the Window」にあるのだ。別にカッコつけるわけではなく、ただただ偶然に、この「英語の歌」に聞き惚れた子どもだったゆえに、これ以降の音楽の嗜好のほとんどが決定されたような気がするのだ。おそらく、ミュージカル音楽に対する偏愛も、この曲によるところが大きいのだと思うし、音楽が大好きになり、音楽に助けられ、そしてあらゆる音楽を偏見無く聴こうと思ういまの僕があるのだ。
 おじいさん子は三文安い。
 でも、ちょっとは三文高いところもあったんだよと、天国のおふくろに伝えてみたいなと思うきょうであった。

太田穣


mercredi, octobre 25, 2006

自慢話、だよん。[Minoru Ota]

 ブログが滞ってしまった。公私ともに多忙だったので、誠に申し訳ない。
 で、この空白の間に起きた自慢すべきことを、いやったらしく箇条書きにしようと思う。
 その1。
 宇宙飛行士の毛利さんのご自宅で、奥様手づくりの夕飯をごちそうになった。サラダとビーフシチューとご飯。とっても、おいしかった!!
 仕事の打ち合わせでお邪魔したのに、夕飯まで……。なんて優しい方々。
 その2。
 仕事でベッキーにインタビューしました。
 なんとメイク中に!! でも、メイク前もメイク後もあまり変わらない。素がきれいな人なんですねえ。
 とっても、まともで、前向きで、いい人でした。
 その3。
 仕事でキングコングの撮影をしました。西野君はお笑いの人なのに恥ずかしがり屋でした。
 その4。
 近所の安倍ちゃんが総理になって以来、警備の厳しいこのあたり。我が娘に対する警察官の過剰な対応に抗議したら、制服をバリッと着込んだ責任者の方がすぐに謝りに来てくれた。この一件の後、見回りする警察官の方で僕にお辞儀する人が増えた……。
 その5。
 友人の画家、マギダ・デ・ジョゼさんの個展があり、家族みんなで食事をした。娘が意外と英語を理解していたのにはビックリした。子どもはすごいな。
 ちなみに、マギダさんの作品は素晴らしい。是非、ブレークしてほしい。
 その6。
 家のすぐ近くの山の手通りの横断歩道でまた事故があった。ぜったい呪われた横断歩道だと思う。だって、これまで何人の人がこの横断歩道で亡くなったのだろうか? これは自慢にはならないか……。

太田穣

mardi, octobre 10, 2006

お知らせでーす[Izumi Shoji]

 唐突ですが、友人のアーティスト、マギダさん。ブラジルの方で、日本に住んでらっしゃる時に知り合い、10年以上のお友達。今はアメリカに住んでらっしゃるのだけど、時々日本でも個展を開いていて、今も来日中で銀座で個展を開催中。
 昨日オープニングで私も観に行きましたが、見ていて脈が乱れるほど感性豊かな作品ばかり。お近くを通るかたがいらしたらのぞいてみてくださいませ。
http://www4.big.or.jp/~ogallery/
 ギャラリーのサイトでちょこっと作品も観ることができます。

 ちなみに、夫も私もマギダさんの作品には惚れ込んでいて、我が家にはそうですね〜、10点以上は彼女の作品が所蔵されています。ご覧になりたい方は見に来てくださいね!

庄司いずみ

jeudi, octobre 05, 2006

ゆっくり忙しい理由 [Miyuki Shoji]

 表も裏もないB型なもんで、とってもわかりやすい性格ではあるのだが、「じつは……」ってことはいくつもある。たいていは隠していたわけではなく、言うまでもないとか、忘れてたとか、そうだっけ、程度の話。
 だがこの件に関しては、意識して言ってこなかった。だって自信がなかったんですもの、私。いわゆる”高齢”だし、生まれて初めてのことだし、早くから人に話すと幸運が逃げるっていうし、プライベートなことだし。
 カンのいいあなたならピンと来たでしょ。ええ私、妊婦なんです、今。
 9か月くらいまで「いま5、6か月くらい?」とか「全然わからない」と言われ通しだったくらいちびっちかった腹も、さすがにこの頃は丸〜くなってきた。ケリもあればしゃっくりもある。お父ちゃんが帰ってくると元気いっぱいになるし、何となく性格らしきものもあるみたい。スウェーデンボルグとかシュタイナーじゃないけど、臨月の今、魂入っちゃってますっ。
 世間のシリアスな方々(不妊治療に大枚を投じたり、計画出産をしたり、妊娠を視野にローン組んで家を建てたりなどなど)には申し訳ないというか何というか、前出の自力整体を始めて3か月くらいした頃、「何や体調エエけど生理もえらい軽なったなぁ、まさかこのまま更年期かぁ?」と自分で自分にツッコミを入れていたら、「おじゃましま〜す」といらしたみたい。思い切って行ってみた病院の超音波機械の画面に、ぴこぴこ脈打つ豆粒みたいな心臓が映ったのだ。
 あまりにも驚いて「え゛、え゛〜っ」と叫んだら、「今は、試験薬が陽性だったら、ほぼ確実なんですよ」と冷静に言われてしまったが、帰り道でようやく、新しい生命を思って何ともいえない感慨に襲われた。
 その数か月前にも、とある神社で「そろそろだそうですよー(神様がおっしゃるにはネ)」と言われて「えっ」と思いはしたけど、「40過ぎてるし、そう簡単には……」と、話半分だったのに。

 以来、ホルモンバランス七変化の奴隷となった私は、かんきつ類(特に文旦)をむさぼり続けたり、塩のきいたマ◯ドナルドのフライドポテト(!)にクレイヴを覚えたり、食事をした直後なのに空きっ腹になったり、「何かカリカリしたもの」が食べたいのに何なのかわからず悶々としたり、バタくさい焼き菓子が食べたくてたまらなくなったり、やたら眠くなったり、抜毛がなくなったり、足がむくんで靴が入らなくなったり連日真夜中につって痛みにのたうったり、肌がツルツルになったり、重いものを持つとお腹や腰に来たり、腹の重さで恥骨結合が痛み始めたりと、目まぐるしい体調の変化を体験できた。今は小豆もの、餡ですね。
 妙な食欲については、時期が過ぎると憑き物が落ちるように欲しくなくなるのも、まさにテキスト通り。個体とはいえ、同じ動物なのねーみんな、と実感する。
 とはいえ私の場合、つわりも一切なかったし(ドラマみたいに「うっ……」「ま、まさかみゆきさんアナタ……」てな場面を期待してたんだけど、ただの1度もなし)、上記のようでも諸症状が軽すぎて本当にごめんなさいって程度なんですから、世の妊婦のダンナ様方、ぜひとも奥様にはこの際、尽くしてあげてくださいまし。

 「明日できることは今日するな」とばかりにゆるめに暮らしているせいで出産準備が何もできておらず(短気な母と生真面目なところのある妹からは「ああもう、大丈夫なのっ」とガンガン言われることしきり)、今も締め切りが残っているため最近、お腹に向けて「ゴメン、まだ仕事終わらないからちょっと待ってて〜」と話しかけていたところ、病院で「ん? これじゃあまだまだだねぇ」と言われたばかり。
 聞いてくれたんだね。すまぬ、ちびちゃん。これまで「準備できたら好きなときにおいで」と言ってきたのに、そんな言葉、反故にしっぱなし。大人なんてそんなものさ。
 そういうわけで、のろのろしてはいるけれど、私とっても急いでいるんざんす。さっ仕事仕事、ガンバルよっ。

庄司みゆき

mercredi, octobre 04, 2006

ヤセの大食い[Izumi Shoji]

 クッキング本のお手伝いをしているおかげで、ここんところ立て続けにグルメ番組を観ている。ふだんほとんどテレビは観ないしグルメ番組にも興味はないが、いや〜、おいしそうなもんですね! 自分が食べるわけでもないのに(何度も言うけどベジタリアンなので)、「今日は絶対はまぐりのかき揚げを作ってあげたい〜」、「おおッ、この卵とじの技はすごい。試してみたいからカツ丼、作っちゃお」とか、すぐに洗脳されてしまう。

 しかし、時々思うが、私は進路を間違えたのだろうか。私ってば本当に料理が好きなのだ。食べるのも好きだが、作るほうがもっと好き。小学校5年生くらいの頃かな、料理が好きすぎて家族の朝食作りを任されていたこともある。眠気に勝てず、1ヶ月もせずに挫折したけど。そういえば母も「あんたって好きなことといえば、本を読むのと料理くらいしかないんだから、将来は料理研究家になったら?」なんて言ってたっけ。
 というわけでグルメライターでもなんでもないが、料理のレシピを書くのはふだんの記事を書くよりストレスがない。単純作業、たとえばデータ書きとかのコツコツ仕事は正直言うと好きじゃないのだが、レシピ書きならチマチマ仕事でもわりに平気。うーん、やっぱり進路を間違えたかも?

 ただ、いくら料理好きでも、胃袋にはかぎりがあるしそうそう食べられるものでもない。だから男の人は食べっぷりのいい人が好き。作ったものを「うまい!」とガシガシ食べてくれたら、お嫁に行ってもいいくらい♪ だが、我が夫は小食なのだ。あまり作ると迷惑がるから、つまらないったらありゃしない。なので、我が家の胃袋担当は娘。やせの大食いとは彼女のことで、保育園の頃から大人の倍は食べていた。
 驚いたのは、「4時間目になるとお腹がすきすぎて、先生が何話してるのかわからない」という訴え。そんなことってあるのだろうか。もちろん朝食ぬきなんてあり得ない話で、朝からバッチリすぎるほど食べてるくせに...。


 これがヤセの大食いの腹部と、どちらかというとガリガリの手足でーす。ね、そんなに食べまくってるようには見えないでしょ。世の中って不公平だ。
 腹部写真だけではつまらないから、近所のベジタリアンカフェのランチプレート。なかなかおいしい、いい店です。しかし、こんなかわいいセットでは、娘は到底足りないだろうなぁ。



庄司いずみ