lundi, mai 01, 2006

「もったいない」の心(その1)[Hitoshi Oba]

(前回のあらすじ:読者の皆様方におかれましては、オーバ、まったく金儲けなんてできない奴だとお思いではないでしょうか? ところがねえ、ふっふっふ、今や〔1996年初め頃。前回1997年頃なんて書いちゃったんだけど、記憶違い。ごめんなさい。もしかして認知症とか、オーバ、ちっと来てるのか〕オーバの手許にあるのは時価数億円はカタイと思われる松本零士先生の大量の生原稿。
 さて、どうしてくれようか。座り小便して馬鹿になっちゃう〔古今亭志ん生十八番中の十八番『火焔太鼓』の名フレーズである〕のも能が無いし、まん○らけにでも売っちゃうか、それとも株式分割してスイスに秘密口座なんか作っちゃおうか、などと煩悶していたのであった。
「かくて、わたくしはちょうどこの時分、富み栄えて、わたくしの幸運という幸運の、絶頂に立っていたのでございます」〔岩波文庫『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』ラスト〕なんか、毎回やかましい「あらすじ」である。申し訳ない)

 そんな次第で、94年末から刊行が始まった小学館文庫のお手伝いをさせていただくまで、ほとんどマンガって読んだことがなかった罰当たりなオーバであった。
 それまでに読んだことがあるマンガっていえば、水木しげる先生の諸作品(水木先生はもう、オーバにとってはほとんど神様に近い。ちなみに先生の作品は、ちくま文庫に多数収録されてます)、杉浦日向子先生の作品をちょこっと(これも、ちくま文庫が多かったような)、あとは大学時代にはまりまくった高橋留美子先生の『うる星やつら』、入社後、同僚が読んでるのをのぞいたらあんまり面白そうだったんで久しぶりにマンガの単行本を買うことになった佐々木倫子先生の『動物のお医者さん』……、ホントにこれくらいだったのである。
 なもので、松本零士先生の作品もほとんど知りませんでした。同文庫『1000年女王』のお手伝いをさせていただくまで。実は『宇宙戦艦ヤマト』の歌なんかもあんまり好きじゃなかったし、多分これも大学生の時だったと思うんだけど、友人が劇場版アニメ『銀河鉄道999』や同作サントラ盤(当時はもちろんLPだったのよ、お若い読者もいらっしゃると思うので念のため)なんかで泣いたりしてるのを見て、なんか嫌だなあ、なんて思っていたのである。早い話、読まず嫌いだったわけです。
 次は『1000年女王』出しますから読んどくように、って言われて単行本を渡された時も、だから気が重かったのである。絵なんかもろに『999』みたいだし……。
 ところが、読み出してみると、意外にも『男おいどん』的な要素が強かったんですね。松本世界においては、いかなる美女といえどもラーメンライスを天下の美味として食す!
 『男おいどん』ならば、まだホントのガキの時分に「少年マガジン」をクラスで回し読みして大笑いした記憶がある。「押入れ開けるとサルマタケがドサーッ」っちゅう、あれですね。
 そこでオーバ、俄然としていわゆる「大四畳半シリーズ」に目覚めちゃったのだ。幸い勤務先は神保町、新本、古本問わずあさりまくりました。それこそ『男おいどん』も、当時は確か絶版状態、なゆえ古本屋で結構なお値段で買った記憶がある。
 そんな中で見つけたのが奇想天外文庫版『聖凡人伝』の端本。200円とか300円とか、そんな値段だったと思います。でワクワクしながら読み出したんだけれども……。これが超絶天下無双的大傑作!! これは全巻読まねばならぬ、ゼヒ読まねばならぬ(この辺り、ちょっと松本調)と思ったんだけれども、なかなか揃いが見つからない。当時は「古書ネット」なんて便利なものもなかったし。
 で、考えました。「古本でも読めないんだったら小学館文庫で出しちゃえばいいじゃん。第一、こんな大傑作が普通に読めないなんて、あんまりにももったいない!」
 ただですねえ、当時のオーバは一編プロのペイペイ社員に過ぎなかったことであるし、簡単に「出しちゃえばいいじゃん」なんて言える立場じゃ全然なかったわけです。それに前述のようにマンガ読みとしてはまったくの駆け出し、自分の直感にも自信が持てませなんだ。
 だもので恐る恐る小学館の担当の方にご相談申し上げたのである。「あの〜、こーゆー作品を見つけたんですけど、松本先生の作品だし、復刊なんてしてみたらいかがでしょうか……」
 回答を待つこと数日、意外にも「いいんじゃない」とのこと! オーバ、生涯でこれほど舞い上がったことってあんまりない。ただ、奇想天外社はとっくの昔に倒産、したがってフィルムなどもどこにあるのかわからない。だから出すとしたら生原稿から入稿するのが一番コストが安い。
 しか〜し、こっから先がまたちょっとマズイんだけれども、当時くらいまではマンガの生原稿の管理なんかかなり杜撰(版元、作家とも)だったのは前回述べたと思うのだけれども、松本先生はそれこそ作品超多数、おまけに『聖凡人伝』はあんまり有名な作品じゃないことでもあり(小学館担当の方でさえご存じなかったのである)、ま、松本先生のところで生原稿を見つけるのはかなり困難であろう、出てきたらそれこそ奇跡みたいなもんである、とのこと。カメラ撮りなんかするとかなりコストがかかるし、そうなると部数とか厳しいかもしらん、なんてお話だったのである。
 ジャジャーン、ジャンジャンジャン♪ ところが奇跡が起こっちゃったんですね。「なんかちょっと探したら出てきちゃったよ」と松本先生から小学館松本番の方に連絡が入った由。こちらはそれこそ、どんなに埃まみれになろうと何日かかろうと、死ぬまで探し倒す! という覚悟をしていただけに拍子抜けも少しはしたんだけれども、もう有頂天である。
 とある夜、小学館文庫担当の方と一緒に松本先生宅まで御原稿を頂戴しに上がったのであった……。
 すまぬ、もう充分長くなってもうた。なにしろオーバ一世一代の自慢話のゆえ、もう一回続きを書かせていただきます。えー、結果として小学館文庫『聖凡人伝』は実現したし、今現在も書店で入手可能なはずです。続きなんか読まなくてもよいから(おい!)興味をお持ちの方は一刻も早く本屋さんに走られたい! ではまた!1

大場仁史

1 Comments:

Anonymous Anonyme said...

えーっ、そんなご苦労があったとはつゆ知らず、ごく普通に買いましたよ、『聖凡人伝』。だって私も「ラーメンライス」ファンだもん。
(「もぅあいつトリコロス!」「え? トリコモナス?」なんていう不潔ギャグの数々、覚えてますよ~)
とはいえ今は昔。引越し10回くらいするうちに見当たらなくなっているから、いま一度、買うべきか否か。

10:52 AM, mai 01, 2006  

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