停滞日記[Hitoshi Oba]
2月某日
目覚めると猛烈な二日酔い。昨日、親父たちの将棋大会でまぐれの優勝、当然祝杯はあげたのだが、その後どうやって帰ったか記憶がない。おそるおそる枕元を見ると、果たして近所のコンビニで買ったと思しき日本酒の紙パックが……。まったくいけません。オーバは元来アセトアルデヒドを分解する酵素をほとんど持たない(長年の経験でほぼ確実と思う)。だのにちょっと酒を飲み始めると、頭が勝手に「もっと、もっと!」と言い出すのだ。昔はそれでも翌日昼くらいには回復していたのだが、最近ではほとんど終日、死人である。なかなか水を飲む気力さえわかず、ひたすら布団にくるまって横になっている。汗をかきたいのだが、年をとるとなかなか汗も出てくれない。
2月某日
まだぼーっとした頭で整形外科に行く。運よくマッサージは愛しのコレア姉ちゃんである。で、マッサージを始めるなり、「すごく凝ってますね。お仕事忙しかったのかな」と言われ、赤面。実は大二日酔いで終日伏せっておりました、と白状すると、寝たきり老人の例をあげて注意される。あこがれの隠居をすっ飛ばして寝たきり老人は、流石に悲しい。素直に反省する。
2月某日
ちょっとした原稿を書く仕事なのだが、届いた宅急便がどえらく重い。俺は肩が痛いんだと腹をたてながらあけてみると、各種書籍のコピーの山。眺めること1分。取り敢えずしめて、整形外科に。毎日コレア姉ちゃんにマッサージしてもらえるわけではない。できたら美容院みたいに指名したいくらいなのだが、ここH町整形外科のシステムは運まかせである。結局この日は密かに「ホスト風兄ちゃん」と呼んでいるお兄ちゃんにあたる。この人もけっして悪くはない。午前のへっぽこ兄ちゃんに比べたら雲泥の差である。いきなり「金メダル取りましたね」と言われ、なんのことやらわからず。「トリノですよ。見てなかったんですか?」すみません。見てません。アウレリウスのブログでも誰も触れてなかったしな。その後、マッサージを受けながら色々と教わる。6月のサッカー・ワールドカップ、日本が入った予選枠のメンバーまで教えてもらう。えーと、ブラジルがいて、こことは引き分けで行ければ上々で……後は忘れた。支払を待っていると、待合室のテレビで「荒川静香物語」みたいな番組をやっている。きつそうな顔の人だなと思う。
2月某日
ここのところ頭が不調である。これまで好調だったことはほとんどないのだが、今回はおまけに気力がない。何事も億劫である。もしかして初老期鬱病たらいうやつかもしれない。昨日まで普通そうに見えたお父さんが突然首をくくっちゃったり、というあれである。とにかく短い原稿を書くのでも進まないことはなはだしい。そうだ、こういう時こそコレア姉ちゃんにマッサージしてもらって愛と勇気をもらうのだ、と整形外科に行くのだが、またもやホスト風兄ちゃん。この日は新聞で予習しておいたので、トリノについてのお話もできる。妙なところだけ律儀で勤勉なのである。夜、伊集院光の深夜放送、さっそく荒川静香やフィギュアスケートを「エロ話」にしていて、笑う。
2月某日
起きられない。もうちょっともうちょっとと思ってるうちに気が付いたら午後2時。舌打ちしてドト○ルに出かけ、朝食兼昼食。そうだ、今度こそはアウレリウスのブログに世間様なみの時局に即した話題について書こう、と思って新聞を読むのだが、オーバが書けそうなネタは見当たらず。民主党のインチキ・メール事件にしたって、パソコン原始人のオーバにはどこが間抜けなのかさえよくわからない。そういえば、この事件を初めて知ったのも、整形外科の待合室のテレビでだった。月末なので家賃を振り込もうと銀行に行くが、長蛇の列。明日払います、ごめんなさい、大家さん、とつぶやきつつ整形外科。またしてもホスト風兄ちゃん。この日は流石に話題もなく、黙ってマッサージを受ける。支払をして外で煙草を一箱買う。気付くと所持金706円。これが現在オーバの持つ現金すべてである。新聞の集金など来ませんように、と祈りながら帰宅。億劫だけど仕事だあ、と思ってパソコンを立ち上げるが、すぐにはかかれず、ついアウレリウスのブログをのぞく。太田師匠は相変わらず元気で忙しそうである。80年代ねえ、安月給で華やかなことなんて何もなかったなあ、そういえばジュリアナなんてものもありましたねえ。オヤジ週刊誌でよくグラビアになってたもんだ、などと思いながらインインメツメツな気分でこの日記を書く。こんなものでいいのか、と自分でも思いながら投稿。めげているときには悪い予感だけはあたるもので、そのすぐ後に、本当に新聞屋さんがくる。ないものはない。払えないものは払えない。ひたすら謝って、また明日、とかいって帰ってもらう
大場仁史


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