lundi, février 20, 2006

催眠術が勝つか睡魔が勝つか[Ota]

 きょう、打ち合わせで元HotDogPress編集者のMさんに久しぶりに会った。彼は現在、いわゆるITベンチャーに勤めており、なんでも、ヒーリングをテーマにしたサイトを作りたいということで、そのブレストに呼ばれたのだ。というのも、15年ほども前になるかと思うが、彼が担当した連載ページで僕と妻の庄司いずみが、いわゆるニューエイジものの体験ルポを協同で書いていたからで、そのへんは得意に違いないと見込まれたのである。
 ま、得意かどうかはともかく、Mさんと話しているうちに、そのころに取材した数多の尋常ならざる人々の顔や言葉が思い出された。
「あんたは魂の入れ替えをしないと6年後に死ぬよ」と宣った織田無道。六本木瀬里奈でのシャブシャブ、ごちそうさまでした。でも、あの、僕、まだ生きてるんですけど。
 あなたの前世は中国で、うんたらかんたら、と延々話し続けた某有名アメリカ人チャネラーの女性。妻も二人の関係を隠してチャネリングを受けたのだが、その結果が僕のものとちっともかみあわない。「前世は中国人ね」だけは同じだったが。ま、確かに中国の人口はものすごいですから、確率的には中国人が前世だった人は多いかもってことか……。
 とはいえ、「宇宙の不思議」にのめり込んでいる人には誠実でマジメな人が多かった。
 今でも思い出すのは、日本で初めて前世療法を始めた故・桜井ゆみさんの取材だ。「ニューエイジ・夢見る地球」という彼女の著書に彼女の思想が詳しく描かれているが、amazonで調べるとどうも絶版になったらしい。
 桜井さんは確か、アメリカで心理学などを学ぶうちに退行催眠を知り、そして前世療法なるものに出会った。数多くのセッションを経験するうちに輪廻転生を確信するようになり、帰国後、千葉の自宅でセラピストとしての活動を始めたのだった、と思う。
 つまり簡単に言えば、現在の心理的な困難や障害は幼少期のみならず、その遙か向こう、すなわち前世にまでその原因を探ることができるということなのだと思う。そこで退行催眠を使ってどんどん過去へと遡り、前世のトラウマへと突き進むわけだ。
 取材で訪れた桜井さんのご自宅は瀟洒で広々とした普通のお宅。まるでピアノの先生のおうちにお稽古に行ったが如くの感じで、応接間のような治療室へと通された。簡単なインタビューの後、「では、太田さんも試してみますか?」というわけで、ベッドに横たわり、開始された退行催眠……。
 ところがどっこい、太田へっぽこライター、HotDogPress編集部で朝まで原稿書きで一睡もしていない。催眠なんかかけられなくても一発で爆睡しちゃう。こういうとき、たいへんすよ。催眠にかけられたいのだけれど、激しい睡魔でほんとうに眠ってしまいそうなので、がんばって眠らないようにするのだが、そうすると意識は冴えて催眠なんかかかりません。
 桜井さん、15分ぐらいトライし続けたのですが、上記の理由より、太田の頭も肉体もゴチャゴチャで結局ダメ。桜井さんに、憮然とした表情で「意識を集中する訓練をしたほうがいいですねっ!!」と怒られてしまったのであった。
 ほんとうに桜井さんには申し訳ないことをした。とても素敵な女性でしたのに、不愉快な思いをさせてしまったはずだ。きっと、僕のことを軽率で不真面目なライターだと思ったろうなあ。
 それから数年して、桜井さんが亡くなったことを新聞で知った。今、ネットで調べたら平成9年のことだ。まだ、30代前半という若さであったはずだ。
 もっとお話を聞きたかった人であるだけに、とても残念だ。

太田穣