テイスト・オブ・ハニー [Miyuki Shoji]
食べる楽しみ。人生における三大欲のひとつである。
中でも私を魅了してやまないのは発酵モノ。
味噌、醤油、納豆は言うに及ばず、きらめく日本酒、たゆたうワイン、泡立つマッコルリ。さても名人のぬか漬けのうれしさ筆舌に尽し難く、ゆったりと醸されたあま酒の鼻腔をくすぐることおびただし。
な~んて言っている間も、7、8年前から毎週のように牛乳を注ぎ足しては育てている我が家のヨーグルトは、シュクシュクと熟成している(200種くらいの種菌をブレンドしたものと、母親からもらい受けたカスピ海モノを別々に!)わけだ。微生物のはたらきによって、おいしくてからだにいい食べ物ができるという生命のしくみには瞠目するしかない。
料理ネタや医療ネタ満載の韓国ドラマ『チャングムの誓い』でも、味噌甕のまわりの栗の木を切っただけでその年の味噌がダメになってしまい、味を戻そうと夜中にこっそり祈祷する男が現れたり、宮廷料理人の辞任騒ぎになったりでおおわらわだった。細微な世界の影響は大きい。
発酵モノにつきもののニオイ、これもまた神秘そのもの。ウンチの激臭も希釈すれば香水のようにかぐわしくなると聞いたことがあるが、私には、なれ鮨の濃厚さも、シェーヴル・チーズの酸味も、漬かりすぎたキムチのハイ・テンションも、ルンバのリズムのように誘惑的。しかも発酵食品をよくとっていれば腸が元気になるから、ウンチもほぼ無臭になっちゃう。
そんなわけで、私の作ってみたい常備品リストは、ぬか漬け、味噌、甘酒、果実酒、ドブ○ク(勝手に作ってはいけないという日本ならではの悪法があるため伏せ字)といったところなんだけど(お酒類が多いなぁ)、何しろタネに牛乳を混ぜさえすれば放っておいても固まるヨーグルトでさえ、季節というか室温によってまるで味が違うくらいだから、さらに高度な漬物やお酒はどうなるのか気になるのと、ぬか漬けは毎日混ぜないとダメになるという話で、取材旅行なんかに行けなくなるのではと心配で、まだ実行に移していない。
しかし。江戸時代には夏バテ防止に飲まれていたほどの、本物の甘酒の栄養価のすばらしさや、最初の温度にさえ注意すれば、気絶するほど悩ましい、じゃなくて旨い、ドブ○クが簡単にできるらしいといった情報が集まるにつれて、「ナンでもかんでも傷んでしまう梅雨とか夏が来る前に、発酵モノのひとつやふたつ、仕込んでしまいたい」という思いがふつふつとたぎってくるではないか。
うーんむ。この締め切りを越えたらひとつ、大瓶と麹でも買ってくるか。日本モノなら水だって、日本産のミネラルウォーターじゃないとね。塩はいいのがあるからいいとして、問題はお米かな……。
いろいろと考えつつ台所に行って何気なく冷蔵庫を開けてみると、あらら。少し残っていたモヤシが、これも微生物の働きによって腐敗進行中。イカンイカン。
同じ微生物のしわざとはいえ、食べられるものなら栄養、そうでなければ毒になってしまうという衝撃の事実が、いま明かされたのであった……(大げさ。っていうかこれ、生物の時間に習いましたっけ)。
最後に、「ふふっ、秘伝のぬか床、分けてあげようか?」とか「てやんでェ、ドブ○ク作りなら任せろィ」というかた、右下の封筒アイコンをクリックしてぜひご一報ください。ワタクシ、駆けつけて弟子になります! 今なら出来のいいヨーグルト2種、おまけについてます。
庄司みゆき


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