mardi, février 14, 2006

薔薇色のガウン[Izumi Shoji]

 ハイ、ハイ、ハイ、ハーイ! 幽体離脱ですか!? 私もそれらしき体験をしたことがある。しかも! そのおりに、三途の川を見た、と思う。
 思春期頃は金縛りはおなじみの現象だった。聴覚がヘンになってキーンと耳鳴りがしたり。ウサギの耳ほど敏感になって、遠くの話し声が聞き分けられたり。ウン、たしかに気持ちのいい時間じゃありません。

 さて、三途の川だ。ハッキリ覚えているが高校三年生の時のこと。当時私は実家から離れた町の某お嬢さま高校に通うため、下宿をしていた。
 お嬢さま学校に行けば、誰もがいいお嬢さんになるわけじゃありません。その頃の私はお風呂上がりに真っ赤なガウンを羽織り、パジャマに着替えずそのまま寝るという自堕落な毎日を送っていた。親の目はない。ガウンで寝ようが私の勝手。楽しかったなあ(ま、そんなことは今はどうでもどうでもいいんです)。
 その夜もガウンのまま、布団へなだれ込んだ。どれくらい眠った頃だろう。またあのいやな金縛りタイムがきた。その日は動けない私のお腹あたりに、子どもたちの気配のようなものが笑いながら乗ってきた。怖くはないが動けないのにメイワクだ。
 金縛りのときって、みなさんはいかが? 私はいつも「とにかく早く動きたい」と焦ってしまう。その時も焦り、何度も起きあがろうと試みた。そして! 何回目かのトライでみょうに軽々、ふうっと上半身が起きたのだ。そればかりか体全体がふんわりと、浮かぶように持ち上がる。そして、自分では意図してないのに私は外に出た。部屋の戸も玄関も、あけなかったと思う。通り抜けたのか!? 
 下宿では犬を飼ってた。見知らぬ人には吠えるが、私にはなついていて決してほえない。なのに、その時は通り抜けようとするとすごい勢いでほえついてきた。「ヘンだな」と思ったが、意志とはかかわりなく体は飛ぶように下宿を離れていく。いや、たぶん飛んでた。地面に足は触れてなかったと思う。下宿の犬が吠え続けたのか、街中の犬が吠えだしたのかはわからない。犬の鳴き声が響く中、私は闇を飛び続けた。
 そのうち明るくなった。夜が明けたかと思ったのだが.....。私は見知らぬ川の前に立っていた。木も草もない、砂利だらけの川原。荒涼とした風景だ。緑一つないモノトーンのような場所で、私の薔薇色のガウンだけが妙に鮮やかだったのを覚えてる。
 「川の向こうに渡ろう」と私は思った。なぜだかわからないが、ここまで来たからには渡るのが当然の気がして。でも....。渡ろうとする私の前にあらわれたのは、うずたかく積まれた砂利の山。背丈より高いその山を乗り越えなければ川は渡れない。乗り越えようとしたのだが....。一歩登ると砂利がズズッと崩れて体がずり落ち、頑張っても一歩たりとも登れない。ああ、くたびれた....。力尽きて砂利の山に体をあずけた途端。私の体はふっと川から遠のき、気づいたら部屋の布団に横たわっていたのだった。
 後で思えばあの川は三途の川としか思えない。としたら砂利の山は賽の河原? しかし....。元気ピチピチ、お色気満載、恋も順調、悩みなし! ノウテンキな女子高生で、「生とは、死とは!?」などと悶々と考えることも皆無だった私だ。その高校三年生が三途の川や賽の河原になに用があったのか。まったくもってナゾである。
 でもあの時、渡れなくてよかった。間違えてあっちの世界に行ったらおおごとだ。なのでみなさん、講座を受けたり、なんかの拍子に幽体離脱がラクラクできるようになっても、川を見たらご用心!

 そうそう。長くなるがもう一つ。前世について。前に取材で、アメリカ人だったかのチャネラーにリーディングしてもらったことがある。私は過去生ではモンゴルの騎馬民族。やさしい夫と仲むつまじくくらしていたのだが、現在の夫(つまり太田だ)に夫を殺され、無理やり娶られたそうな。
「かつてそんな関係だったから今もあなたは彼(太田だ)を激しく憎み、またそれ以上に激しく愛しているのです!!」。チャネラーは言い切った。まるでドラマだ。
 私が夫を激しく憎み、愛しているのかは......、うっふふ、それは秘密でーす。でも、もしそうなら10年以上も結婚生活、持たないかも。愛憎でドロドロになり、刺したり、心中したり。スゴイことになってしまうのではなかろうか。なので、前世があるか否かはおいとくとしても。あのリーディングに関しては、当たってたのかどうかは、ちょっと、いや相当に疑問です。

庄司いずみ