コーヒー・ルンバ [Miyuki Shoji]
週末のひととき、自分でコーヒーを淹れて楽しんだ人も多いことと思う。私はコーヒー中毒ではないが、時間があればていねいに落としてみて軽くその日を占う。飲んでせいぜい1日一杯程度なので少数精鋭、おいしくなければ意味がない。なのに、お湯の温度か淹れるスピードか、同じ豆でも澄んだ味のときとえぐみの立つときがあって、そんな日は「むむ、私、何か焦っているのかな?」と思ったりしてみるのだ。
さて、コーヒー界も知らないうちにいろいろと進化しているらしい。十年一日の如くごく普通のペーパードリップを愛用してきた私が、つい先日、目にしたのがこれだ!

普通のものが3つ穴くらいでタテに線が入っているのに対し、この「透過ドリッパー」というもの、角度が心もちタテ長で、スパイラル状にリブが入り、真中に大きな穴がドーンと開いている。使う紙フィルターもとんがった円錐形で、そのぶん、1、2杯分など粉が少なくてもお湯がコーヒーに触れる時間が長いために蒸らしの時間も長くなり、ネルで淹れるときのようなコクが出やすいとか。しかも、お湯の注ぎ方ひとつで濃くも薄くもなるという。
私のオートマチック嫌い、不便好き心は瞬時にくすぐられ、気がついたときにはクリック終了。写真はプラスチックだが実際に頼んだのはセラミック製だ。併せて「技を磨くため」とか何とか理由をつけて、前々からほしかった細口のコーヒーポットまで注文してしまった。
淹れてみてどうよ、というところだが、これがウマイ。楽しい。
お湯を細くたらせば、苦みや甘みがしっかりあるのにキレイな味が出るし、ドボドボ淹れればあっという間に操作は完了し、薄めになるという寸法。道具というより手の延長のようで、可愛さまで感じる始末。これまで一緒にいたドリッパーちゃん、ごめんね。私の心はもうあなたにはないの。これからは私、透過ドリッパーと共に生きていくつもり。
ああしかしコーヒーといえば、いま一つ、これははずせないという愛器がある。「ナポレターナ」というものだ。

イタリアはナポリで昔から使われていたという直火式エスプレッソメーカー。普通のものとドラマチックなまでに違うのは、ガスにかけ、お湯がしゅんしゅん沸騰してからのやり方だ。
火からおろして何と、全体をひっくり返す。そしてしばし放っておく。10分弱くらいかな? 下にお湯が全部落ちたらできあがり。その間に適温のお湯がコーヒーの粉をまんべんなく膨らまし蒸らし、甘やかな香りのエスプレッソへと変容するのだ。
これがまた、ウマイ。楽しい。そして何より、形がキュート。数秒どころか数分も待つという不便さもたまらない。
一度、食品の撮影に持っていって自慢しながら使ってみせたら、スタイリストさんやカメラマンさんに「おいしー」と大好評で大量発注を受けたこともあるくらいだから、味も確か(あ、私が取次店をやっているわけではなくて、単に買い物を頼まれただけですので誤解なきよう)。
あなたが決して不便好きでなくても、脳が疲れているときやだるいとき、どちらも気分転換としては最適だ。南の国の情熱のアロマがにおい立ち、小股の切れ上がった姐さんだか精悍なロマだかが、一緒にダンスを踊ってくれる。
庄司みゆき


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